「自分に・・・嘘を・・・ついて・・・」 小説版 
                             作詞 作曲 編曲     旁月 今日人


あなたと しばらく会えなくなって 久しぶりにいつもの街角で会う約束をしてみた。

なんだか重いような 軽いような足取りで
目的がちゃんとあるくせに そうでもないような調子で
待ち合わせる場所を目指して賑やかな街をゆっくり歩いていたの・・・。

いつもの街も あの頃と違って なんだか 全く知らない街に来たみたいに見えていたわ。
 


とぼとぼ歩いて 

ほんの少し 早く着き過ぎてしまったから

楽しそうな子供たちの声に誘われて 待ち合わせ場所の交差点を通り過ぎて
公開空地のそばに立っていたの。



いつもの街のはずなのに 周囲に流れていく人達は 
(当たり前だけど・・・) 全然知らない人達ばかりで

まるで この世界中の人が 誰一人として
私のことなんか知らないんじゃないか・・・って気がして
怖くなって交差点の方に戻ったの・・・。


「まだ・・・来ないのかな・・・。」

って 思いながら あなたのことを 目線だけで捜しながら
ぼんやりしていたら 急にあなたの姿が見えた。


「あっ こっちだよ。」って 手をあげて 走って近づこうとしたら
急に信号が点滅し始めた・・・

「しょうがないな・・・。」って
歩行者信号をひとつ見送って
信号が変わるか変わらないかのうちに
あなたに駆け寄ろうとしたら
(私・・・馬鹿だよね・・・やっぱりちょっと笑顔になっちゃってる。)


あなたのそばで笑っている 女の子に気づいて
「はっ」として立ち止まっちゃったんだ・・・。

(そのまま何万時間が流れただろう・・・。)

後ろから流れてゆく人達に 何度か肩を押されて
ようやく我に帰ったら 知らないうちに
二人に背を向けていたんだ・・・。


「なんだ・・・やっぱり そういうことなんじゃんか・・・。」
・・・なんて 勝手にあなたの状況を決めつけて


「いや せっかく来たんだから そんなの良くない !!」
・・・って 思いとどまって 
振り返って歩こうとしたんだけど

足が ガクガク震えてきて 急に歩けなくなった。





「そうだ・・・こんなとこで負けてちゃだめだ。」

「負けてちゃだめだ。」

「負けてちゃだめだ。」

「負けてちゃだめだ・・・。」

ちゃんと あなたとお別れする為に来たんだ
お別れする言葉だって いっぱい考えてきたんだ。


「負けてちゃだめだ。」

「負けてちゃだめだ。」

「負けてちゃだめだ・・・。」

本当は もう こんなところに 一秒もいられないけど・・・



ここに「いたくない自分」に 嘘をついて・・・
このまま ここにいればいいんだ。




ここにいれば もう止められる。

痛ましくて 痛ましくて 痛まし過ぎれば・・・

もう あなたに会おうなんて 思わなくて
済むんじゃんか・・・・。

ここで 思い知ればいいんだ。

私は ここで思い知った方がいいんだ。

ここから 離れずに このままでいたらいいんだ・・・。





・・・そう思いながら あなたに気づかれないように
世界中で一番孤独な公開空地の方を向いたら

二、三歩だけ歩けた・・・。



もう一回 ありったけの勇気を振り絞って 交差点を
振り返ったら

見えている距離よりも ずっとずっと遠くに
あなたと女の子が笑って話している姿が見えた

私は その場に 留(とど)まって 

その情景を ずっと 自分の心に焼き付けていたの・・・・。



++++++++++++++++++++++++++++++-

ほんの数分か 数十秒くらいの間なんだと思うけど

支え続けていた心が ポキッ て音をたてて壊れたのを聞いて


私は
歩きだしたんだ。


「もういいんだ。」

「もういいよね・・・。」って
呟きながら

怖くて怖くて仕方なくて 振り向きもせずに
歩いていたんだけど、

知らないうちに それは 言葉にならなくなってて
ただ、溜息をついて・・・溜息をついて・・・歩いていたみたい。


あんまり早く歩いていたつもりはなかったんだけど
その溜息の白い息が

自分の目の前から
自分の後ろに向かって飛び去ってゆくスピードを見て

「ああこんなに急いで歩いてたんだ・・・。」って
気づいて 少し歩く速度を緩めてみたら


「今、あなたから自分の身を切り離したら・・・私なんにも無くなっちゃう・・・。」
「いったい明日から何を支えにして、どうやって生きてゆけばいいんだろう・・・。」
って ものすごい痛みがやってきて 思わずまた 立ち止まっちゃった・・・。

そうしたら
私を取り囲んで どんどん後ろに流れてゆく 人の波に ただただ流されている
「落ち葉の船」 みたいだな・・・って自分のこと思ったよ・・・。



ビルの切れ間に差し掛かって
空を見上げると 
真っ暗な星も見えない空に 雲が流れていて
雲の裂け目から ぼんやりと月の光がさして見えた。

「ほんとに帰っちゃっていいの・・・・?」

「ほんとにそれで最後でいいの・・・?」

って 誰かが心の中でささやく




「だめなんだけど・・・駄目なんだけど・・・もう無理なんだ・・・。」
って

自分の心に向かって叫んだら


馬鹿みたいね・・・
知らないうちに 元の場所まで歩いてきちゃってて


「そうだ・・・当然だよね。ここがあなたと会える・・・あなたと待ち合わせた場所じゃない
ここに来るって・・・わたし約束したんだものね・・・。そう、約束したんだもん。」
って 少し 笑えちゃった・・・。




あなたは 交差点の向こう・・・あんなにすぐそばに見えているのに
ここは全然 あなたのそばじゃなくて

どうやったら 何十歩かの この遠い距離を歩いて
あなたに近づいていけるのかなー・・・って
思ったら

「あそこにあなたがいる」のに 「そこにはあなたがいない」って 
全部が わかりすぎちゃって・・・


なんだか 何もかも 全然無理に思えて
泣けてきちゃった・・・。




本当だったら そのまま 二人を見ていて
お別れできる決意を固めて

「もういいんだ・・・これでやめにしよう。」って

本当はその場から立ち去りたくない自分に
嘘をついて

その場を後にしたっていい・・・。




そう 思って また歩き出そうとしたら
こんなに街中が賑やかで 溢れ出す音に耳を覆いたくなるくらいなのに

二人の声が 風にのって 聞こえたような気がした・・・。



「あなたのこと好きよ。」って
今 彼女が言ったよね・・・。




あなたが

あのころとおんなじ笑顔で
笑っているもの・・・。


こんなに 騒々しくて
こんなに距離があるんだから
聞こえるはずなんかない・・・・


でも この街の雑踏すべてを突き抜けて
私にだけは聞こえたんだ・・・

まるで 何かの刃(やいば)のように・・・




そう

あなたの笑顔は あの頃と全く変わっていないけど


今 あなたは 

私じゃない 

別の人に

微笑みかけているんだ・・・。
 





そう・・・わかってる。

これは 私が犯してきた

「罪」に対する「罰」なんだ・・・

だから

ちゃんとしたお別れをしてこられなかったから

お別れ出来る ちゃんとした決意が見つかるまで

「離れたいのに 離れられられない。」

「離れたくないのに 離れなきゃならない。」


この場所に立たされているんだ・・・。

ちゃんと・・・

ちゃんと・・・ 自分が決められるまで

自分に嘘をついて
ここから逃げ出せる方法なんて
無いんだ・・・。







なんだか お別れしたわけでもないのに
あなたと わたしって もう すごく遠いよね・・・。

思い出の中のあなたは 今でも こんなにわたしの胸の中にあふれているのに・・・

私は
きっとその思い出さえも捨てることができずに

きっと ずっと ずっと

あなたを捜し続けるんだ・・・。

これからも きっと・・・・。




こんなに もう遠くなっちゃってるのに 
こんな私さえも捨てられないで

あの交差点で捜しても 捜しても あなたが見つからなかったみたいに

きっと ずっと ずっと

捜しつづけるんだ・・・。

捜しつづけるんだ・・・。 このまま ずっと・・・・。

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「自分に・・・嘘を・・・ついて・・・」
                        作詞 作曲 編曲     旁月 今日人


遠くで聞こえる子供達の声 繁華な街の狭い公開空地
戸惑いながら歩く わたし  通り過ぎる人波

ようやく あなた 見つけたとき 差し掛かった交差点の向こう側で
歩み寄る前に立ち停まる  そばに別の女性がいる

   本当なら お別れの言葉を見つける為に
   自分に嘘をついて その場を離れず 居てもいい

遠くに見えた二人の影 繁華な街の狭い公開空地
私は独りで立ち留まる あなたは 別の女といる


 
小さく漏れた溜息が 見る間に背中に消える前に
振り向きもせず歩く私 通り過ぎる雑踏

闇夜に残る淡い雲間 囁きかける心の裏で
明日も見えずに 断ち・・・止まる  そこに あなたは いない

   本当なら お別れの合図を見つける為に
   自分に嘘をついて その場を離れてみてもいい

小さく聞こえた愛の囁き 繁華な街を突き抜けて
私は独りで凍りつく あなたは 別の女といる



   本当なら お別れの言葉を見つける前に
   自分に嘘をついて そこから逃げ出す術は無い

遠くに見えた あなたと わたし 思い出の中のずっと向こう側
私はそれさえ 捨てられず あなたを捜し続けてる


遠くに見えた あなたと わたし 思い出の中の ずっとずっと向こう・・・

私はそれさえ 捨てられず あなたを捜し続けてる















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